この記事では、2023年度に過去最多となった児童虐待相談件数の背景と、青森県における地域的特徴、そして心理的虐待やネグレクトが子どもに与える影響について解説します。
全国で22万件を超えた児童虐待相談
厚生労働省とこども家庭庁によると、2023年度の児童相談対応件数は全国で22万5,509件に上り、過去最多を記録しました。
そのうちの約60%は心理的虐待であり、子どもが受ける目に見えない傷が社会問題として深刻化しています。
主な内訳
- 心理的虐待:約13万5,000件(60%)
- 身体的虐待:約5万1,600件(23%)
- ネグレクト:約3万6,500件(16%)
- 性的虐待:2,473件(1%)
青森県で相談件数が多い理由
青森県では2,040件の相談が寄せられ、地方都市としては高い件数となっています。
この背景には、以下のような地域特有の事情があると考えられます。
要因①:過疎化と核家族化
地域の見守りや支援の手が減少し、家の中で起きている問題に外部が気づきにくくなっています。
要因②:通報体制の整備
市町村と児童相談所の連携が強化されたことで、通報がしやすくなり、件数が「見える化」されてきたという側面もあります。
つまり、件数が多いことは「問題が増えた」だけでなく、「気づけるようになった」結果でもあるのです。
心理的虐待の影響:言葉が残す深い傷
「消えてしまえ」「どうせお前なんか」といった言葉は、子どもの心に深い傷を残します。
暴言や無視、感情を押し殺させるような態度は、見た目では分かりづらい心理的虐待として、長期にわたって影響します。
しかし、「しつけの一環」として見逃されるケースも多く、事態が深刻化する前に気づくことが難しい現状です。
ネグレクトの境界線とは
ネグレクトには、食事や医療の放置に加えて、日常生活や教育の放棄も含まれます。
- 何日も入浴できない
- 歯の痛みを放置される
- 学校に行かせてもらえない
これらは子どもの権利を一方的に奪う行為であり、発達支援や教育支援とは異なる観点で判断されるべきです。
背景には親の孤立や育児疲れがある場合も多く、単なる非難では解決に至りません。
通報のハードルと声を上げられない親
児童相談所の全国共通ダイヤル「189(いちはやく)」の存在は知られてきましたが、「家庭のことを外に出していいのか」と迷う声も少なくありません。
「これくらいで通報していいのか」とためらう保護者や、支援者自身が声を上げづらい空気が残っているのも事実です。
声を上げられなかった大人にも、私たちは耳を傾ける必要があります。
見逃さないために:社会全体で支える視点
虐待は家庭内の問題で終わらせてはいけません。通報体制の整備や支援制度の周知、地域のつながりを再構築することが求められています。
誰かが声を上げたとき、それを受け止められる社会であることが、子どもの命を守る第一歩です。
まとめ
- 2023年度の児童虐待相談は過去最多の22万件超
- 青森県は地方都市の中で特に件数が高い
- 心理的虐待やネグレクトの見えにくさが問題
- 通報や相談のハードルを下げる社会づくりが必要
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参考資料
- 厚生労働省「令和5年度 児童虐待相談対応件数」
- こども家庭庁発表資料(2024年版)
- 東奥日報「青森県で過去最多の虐待相談」
- B4S「虐待の種類別データと対応の変遷」
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